街の風になる『樹木葬』

台東区に住んでいるKさんは団塊の世代に生まれ定年を迎えた。仕事一筋に来た人生、仕事をリタイアして、急に自由な時間が増えた。そんな折、昔仕事で世話になった先輩に会いたくなり電話をかけた。電話に出た奥さんから「主人は昨年無くなりました」との声、思いもよらぬ話に言葉を失ったが、気を取り直してお墓参りに行きたい旨を話した。すると奥さんから「主人は山の木の下にいます」とのこと、先輩は確か東京の生まれのはず、家も都内なのにと不思議に思いながら住所を聞いた。5月の連休、小旅行を兼ねて先輩のお墓参りに出かけた。お寺の住職に案内されたのは、墓石が一つもない緑の丘。若葉が芽を出した小さな木の下の石のプレートに懐かしい先輩の名前を見つけた。優しく吹き抜けた春風の中にふと、懐かしい先輩の声が聞こえてきたような気がした。家に戻り、報告の電話かけた。「お前も死んだらここに来い、二人で野を走る風になろう」先輩は亡くなる前、奥さんにそう伝えたそうだ。電話を終え、kさんは、「子供の無い自分たちにも同じことだ」「俺は街の風になるかな」とつぶやいた。それを聞いていた奥さんが「そうですね」とほほ笑んだ。

 

 

時代に合わせてお墓も変わる

総務省が毎年「敬老の日」に合わせてまとめた推計人口によると、65歳以上の高齢者が総人口の2割を超え、高齢化社会がますます拡大していることが、明確になりました。少子高齢化や核家族化の進展、結婚しても子供を造らない夫婦、非婚化、おひとり様の増加などライフスタイルの変化は、従来の「お墓」の在り方も変えています。そうした時代の流れの中、最近注目をされているお墓に「樹木葬」があります。樹木葬といっても、決してお葬式ではありません。草木や自然に相(葬る) 収める、埋葬するということです。自然にやさしい埋葬スタイル「樹木葬」が新しい形のお墓として注目されています

 

自然に還る新しいお墓

第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した日本映画「おくりびと」の試写会インタビューで主演の俳優が「樹木葬で送られたい」と話し、話題になりました。樹木葬は15年ほど前に登場した新しい埋葬のかたちです。墓石の代わりに樹木や花を植えて墓票とし、遺骨は土に返します。環境を壊さないように配慮しながら自然に還ります。樹木葬は最近の社会事情を背景に全国的に広がりを見せています。

 

樹木葬の料金

樹木葬の料金は墓地を契約し墓石を立てる従来のお墓と異なり安価になっていますが、寺院、霊園によってお墓や埋葬の料金やシステムに違いがあるので、事前に調べておくことをお勧めします。

 

産経新聞・くらしの百科/6月号

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週刊新潮 樹木葬・自然葬企画 「自然に抱かれて永眠る悦び」

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